2008年8月29日金曜日

ホンジュラスALBAに加盟

伊高先生(現代ラテンアメリカ情勢)より受講生のみなさんへのラテンアメリカに関する緊急ニュースです。
しばらく事務局を留守にしていたので更新が遅れて申し訳ありません。

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ラテンアメリカ講座受講生の皆さん、ラ米で重要な動きがあったので、現地からの情報を基に以下をまとめ、投稿します。

080826 サルバドール


◎オンドゥーラス(ホンジュラス)がALBAに加盟

オンドゥーラスのマヌエル・セラヤ大統領は8月25日、首都テグシガルパでALBA(ラ米ボリーバル主義代替統合地域=アルバ)条約に加盟する文書に調印した。

調印式にはウーゴ・チャベス・ベネスエラ、エボ・モラレス・ボリビア、ダニエル・オルテガ・ニカラグアの3カ国大統領、カルロス・ラヘ・クーバ国家評議会副議長が立ち会った。ことし1月ALBAに加盟したカリブ海英連邦の島国ドミニカのルーズベルト・スカーリット首相は立ち会わなかった。 

セラヤが加盟に踏み切ったのは、原油高騰で経済運営が限界に達したと認識したことによるところが大きい。オンドゥーラスは既に、チャベス主導下でベネスエラ石油公社(PDVSA=ペデベサ)が運営するペトロカリーベ(カリブ沿岸諸国石油公社の連合体)に加盟して、国際価格よりはるかに安く原油を輸入して恩恵を受けている。 

チャベスはテグシガルパ到着時に、「ALBAは帝国主義の覇権主義に対する対抗政策だ。人民のために社会正義を打ち立てようとしている進歩主義政権によるラ米統合政策だ」と述べた。

セラヤは、「オンドゥーラスとその人民は、ALBA加盟に際し、いかなる帝国主義にも許可を求める必要はない」と応じた。中道左翼を自任するセラヤらしい発言だ。 

だが国内には、ALBA加盟に反対する勢力が広範に存在する。

ニコラス・マドウーロ前大統領ら保守派は、「伝統的な同盟国は米国であり、米国に歯向かっているチャベス主導のALBAへの加盟は致命的だ」とセラヤを厳しく批判している。

オンドゥーラスの輸出の90%は米国向けであり、米国在住のオンドゥレーニョ100万人が年間にオンドゥーラスの家族に送金する総額30億ドルの現金は国家経済にとって無視できない重要な外貨収入源だ。こうしたことから、米国との関係悪化を懸念してALBA加盟に猛反対を繰り広げていた。 

またオンドゥーラスは、対米TLA(自由貿易協定)に立脚するCAFTA-RD(米国・中米・ドミニカ共和国自由貿易協定=カフタ・エレデ)に加盟している。

反対派は、ラ米左翼政権の集合体とも言えるALBAへの加盟は米国との通商関係を損なわせると批判する。 反対派は野党だけでなく、セラヤが所属する与党の自由党(PL)内にもおり、ALBA条約加盟を発効させための国会での批准は極めて難しいと観られている。

だがオンドゥレーニョの70%近くが貧困層であり、その生活救済が第一とするセラヤは、ALBA加盟に舵を切ったわけだ。 

オンドゥーラスの隣国エル・サルバドールでは2009年1月に大統領選挙が実施されるが、左翼野党ファラブンド・マルティ民族解放戦線(FMLN)のマウリシオ・フネスの当選が有力視されている。フネス政権が誕生すれば、ALBAに加盟する可能性が出てくる。 

ALBAは、チャベスが米国主導の米州自由貿易地域(ALCA=アルカ、英語ではFTAA)設立構想に対抗するため、フィデル・カストロと話し合って結成した政治色の強い経済同盟だ。シモン・ボリーバル(1783―1830)、ホセ・マルティ(1853―95)らのラ米統合主義に根差している。「小さな祖国=パトゥリア・チカ=ラ米各国」はALBAを通じて、いまや「大きな祖国=パトゥリア・グランデ=統合されたラ米」を志向している。

南米12カ国は欧州連合(EU)に刺激されて、南米諸国連合(ウナスル)結成を目指しており、これも「大きな祖国」を理想としている。 

米国はいま、11月の大統領選挙に向かい選挙戦が激化しつつあるが、もし民主党のアフリカ系候補バラク・オバマが勝てば米国とラ米の関係が改善される可能性が出てくると、ラ米では期待されている。