特集:ルクレシア・マルテル
『植民地』の残影
監督:ルクシア・マルテル(Lucrecia MARTEL)
1966年アルゼンチン・サルタ州生まれ。初長編『沼地という名の町(La Ciénaga)』(2001)でベルリン映画祭アルフレッド・バウアー賞、サンダンス・NHK国際映像作家賞などを受賞。『The Holy Girl』(2004)と『頭のない女(The Headless Woman)』(2008)がカンヌ映画祭コンペに選出。『サマ(Zama)』(2017)は祖国のアカデミー賞で作品賞、監督賞などを受賞。『私たちの土地(Landmarks)』(2025)は初の長編ドキュメンタリー。
【上映映画作品】
・私たちの土地 / Landmarks
アルゼンチン、アメリカ、メキシコ、フランス、オランダ、デンマーク / 2025 / 122分 /
ルクレシア・マルテル監督初の長編ドキュメンタリー。アルゼンチン北部の先住民指導者ハビエル・チョコバル氏が、先祖伝来の土地を守ろうとして殺害された2009年の事件とその裁判を追う。この事件を500年にわたる植民地支配による暴力と土地収奪の歴史の延長として位置づけ、現代アルゼンチンの構造的な不公正を明らかにしていく。
11月29日(土)11:00 -朝日
・サマ / Zama
アルゼンチン、ブラジル、スペイン、ドミニカ共和国、フランス、オランダ、メキシコ、スイス、アメリカ、ポルトガル、レバノン / 2017 / 115分 /
18世紀末、スペイン統治下の南米の僻地を舞台に、かつては武勲を讃えられたスペイン王室の士官でありながら、地方行政官の職に甘んじているドン・ディエゴ・デ・サマの姿を追う。彼はブエノスアイレスに残した妻子と再会するため、あるいはより格式の高い任地へ異動するために、スペイン国王からの転勤許可を記した手紙をひたすら待ち望んでいる。しかし、その手紙は一向に届かず、サマは不確実な未来への焦燥を募らせ、怠惰や腐敗に満ちた環境の中で、時間だけが虚しく過ぎていく感覚に囚われていく。帰郷や栄転の望みが絶望へと変わるなか、彼はついに一攫千金を夢見て危険な探検隊に志願する。この探検は、長年追い求めた「まともな人生」を取り戻そうとするサマの最後の試みとなるが……。
11月28日(金)18:20 -HTC
・沼地という名の町 / The Swamp
アルゼンチン、スペイン / 2000 / 103分
アルゼンチン北部のサルタ州の湿地帯を舞台に、荒れ果てた屋敷で蒸し暑い夏を過ごす退廃的なブルジョワ家族を描いた作品。物語は中年女性であるメチャと、その夫の家を中心に展開する。アルコール依存症気味のメチャは、親戚のタリスとその子供たちと共に別荘で夏を過ごすことになるが、タリスもまた不安定な精神状態を抱えている。無気力で怠惰な大人たち、独自の遊びや冒険を求める思春期の子供たち、そして先住民の使用人たちの姿が湿度の高い夏の空気を背景にして描かれ、家族間の緊張関係や性的抑圧、階級間の軋轢が次第に露わになっていく。そして、ある少年が起こす事故が、この閉塞した日常に一石を投じることになるが……。
11月21日(金)21:10 -HTC