2008年9月17日水曜日

ホンジュラス便り


サシガメの写真 JICAシャーガス病対策のページより引用
http://www.jica.go.jp/jicapark/frontier/0507/04.html

ホンジュラスには立教大学ラテンアメリカ研究所ホンジュラス支局があります。
今日はそのホンジュラス支局長からの報告です。

いつも元気な支局長ですが、いろいろな危険と隣合わせでがんばっているのですね。
東京からエールを送ります。

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気がつけばもう9月、久しぶりのホンジュラス便りです。
今回はちょっと恐ろしい感染症のお話です。

同僚から、出勤前に突然の電話。
彼女は前日、どうも調子が悪いと言いながら帰ったのですが、「熱が39度まで上がってしまった」とのこと。
薬を飲んでも切れる頃にはまた上がる状態で、そのうちに頭痛が始まり、身体の節々にも痛みが現れました。
食べることもできなくなり、病院で検査をしたところ、予想は的中。
 「デング熱」でした。

 日本で馴染みのないこのデング熱は、蚊を媒介とする感染症で、デング熱ウィルスを保有するネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることによって起こります。
 ホンジュラスはデング熱の発生地域で、雨の多いこの時期は蚊が繁殖しやすいため、発症率が高くなるのですが、今年は特に大流行しているようです。
 ここホンジュラスではマラリアに罹ることもありますが、都市部で発生しやすいデング熱のほうが我々にとっては脅威です。

 予防法は蚊に刺されないことしかないのですが、こちらの蚊ときたら服の上からでも刺すくらい食欲旺盛(?)ですから、デング熱に罹るかどうかは運でしかありません。
 デング熱の症状は、人によって、またその時の体調によって大きく異なり、全く気づかないうちに済む人もいれば、免疫力が落ちて回復までに何週間もかかる場合もあります。
 治療といっても特効薬はなく、対処療法しかありません。
 それでもこの同僚の場合は、不幸中の幸いで、いわゆる普通のデング熱でしたが、これがデング出血熱だと、死に至る可能性もあります。
 いつも元気な同僚の弱りきった声を電話口で聞きながら、改めてデング熱の怖さを感じ、また、あんな小さな蚊が大きな人間の体にこれほどダメージを与えることに驚きました。

 日本で耳にしない感染症には、デング熱のほかにシャーガス病が挙げられます。
 シャーガス病は中南米に見られる寄生虫病で、体長1.5~2センチくらいのサシガメを媒介して起こります。土壁や藁葺き屋根の家を好み、夜間に活発に動いて吸血します。デングやマラリアと比べてシャーガス病の恐ろしいところは、自覚症状なく慢性期に移行することが多く、感染後10年以上経過してから心臓や循環器系、消化器系に影響が現れ、そうなると治療法がなく死を迎えるという点です。
 主に貧困層の疾患率が高く、シャーガス病の知識がないために感染が拡大するという問題を抱えています。

ホンジュラスでは2種類のサシガメが生息しており、都市部に棲むタイプのサシガメは、私の職場や同僚の車の中でも見つかっているので、これも他人事では済まされません。帰国時にはきちんとシャーガス病検査をしなければ、と思っています。

先日、シャーガス病プロジェクト関係者からホンモノのサシガメを埋め込んだキーホルダー(啓発活動グッズ)をもらったので、記念に持って帰ります。興味のある方にはお見せしますよ!

ラテンアメリカ研究所ホンジュラス支局長より