本日もラテンアメリカ研究所・ホンジュラス支局長からのお便りをお届けします。ここでもアメリカの大統領選にも関連した記事がありますね。
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ここ数日の間に、ホンジュラスのおめでたいイベントが続きました。
まずはこどもの日。日本でこどもの日といえば5月5日ですが、こちらでは9月10日です。こどもたちにとっては残念なことに、ホンジュラスのこどもの日は祭日ではありません(日本に生まれてよかった!)。でも学校ではお祝いの行事があり、もちろん家族でもお祝いをします。事務所のお父さん、お母さんたちも、今年は何をしてあげようか・・・とかわいいこどもたちの喜ぶようなお祝いを精一杯考えたようです。なかには「ウチではケーキが出るよ!」と友人を招待し、慌ててお母さんにケーキを買いに走らせるというチビッコ策士もいたとか・・・。お父さん、苦笑しながら話してくれました。
そして同じ9月10日に、次期ワールドカップサッカーの予選試合となる「ホンジュラスv.s.ジャマイカ」が行われました。この日は仕事の出先で関係者が打ち上げのバーベキューをすることになっていたのですが、ホンジュラス人を誘っても「今日は大事な日だから」と断られたそうです。そういえば、一月ほど前の試合の日も、職場には有志が国旗を飾っていて、試合時間が近づくと潮が引いたようにオフィスから人がいなくなっていました。どちらかといえばラテンらしくない控えめなホンジュラス人も、サッカーとなるとラテンの地が騒き出すようです。それもワールドカップにかける情熱はひときわです。オリンピックにもホンジュラス代表は出場しましたが、これほどの盛り上がりは見られませんでした(というよりほとんど黙殺でした)。やはりサッカーのナンバーワンを決めるのは、ワールドカップなのですね。幸い、この日は2-0でホンジュラスが勝ち、こどもたちも大満足だったことでしょう。
さて、それから5日後の9月15日は、日本では敬老の日ですが、ホンジュラスでは独立記念日です。この日はもちろん国民の休日となっています。祝日はこの日だけですが、実際には数日間のイベントが行われます。独立記念の恒例行事はパレードです。お揃いのユニフォームに身を包み、太鼓やシンバル、笛を携えたマーチングバンドやダンスチームが大通りを練り歩きます。何事もきっちり揃えることの苦手なホンジュラスにしてはまぁがんばってるかなーという程度の緩やかなまとまりの行進です。寸分狂わず統制の取れたバンドよりも、あっち向いたりこっち向いたりしている行進の方が休日の朝に似合うという気がするのは、私がちょっとホンジュラス化してしまったからでしょうか?
そんな独立記念日の時期に穏やかでないニュースがホンジュラスを騒がせています。中南米の反米化は近頃顕著にそして広範囲に及んでいますが、先日ボリビア、ベネズエラがそれぞれの米国大使の出国を求めるとともに駐米大使を引き上げさせる決断を下しました。この動きを受けて、ホンジュラスはボリビア、ベネズエラの決定に賛同を示し、ちょうど交代時期にあった在ホンジュラス米国大使の信任状提出式を中止したのです。これまで親米路線をとっていたホンジュラスですが、ALBAへの加盟、そして今回の信任状拒否と、セラヤ大統領は今、反米に舵を取ろうとしています。とはいえ、ホンジュラスは歴史的に見ても米国の強い影響を受けているので、今回の大統領のコメントも、将来的には新米国大使の受入を認める可能性も含ませた玉虫色の発言となっていました。
私は政治には全くの門外漢ですし、国家としての米国にはしばしば嫌悪感さえ覚えるたちなので、決して米国への追従をよしとするわけではありませんが、こんなどっちつかずの日和見政治は、結局ホンジュラスに悪影響こそあれ、よくは転ばないだろうという気がします。ボリビアやベネズエラが米国に対してここまで強気の姿勢を取れるのは、何と言っても潤沢な石油やガス資源によるところが大きいはず。そこがホンジュラスとの決定的な違いで、資源という武器を十分に持たないホンジュラスが同じことをすれば、たちまち息の根が止まってしまうことは火を見るよりも明らかです。
どうも、ホンジュラスは「ノアの箱舟」ではなく「セラヤ大統領の泥舟」に乗っているような気がしてなりません。泥舟の運命やいかに・・・。