年配の日本人、特にラ米に関心のある人ならば、フランスの知識人(作家・哲学者)レジス・ドブレ(69歳)を知らない人はいないだろう。1967年にボリビアでゲリラ戦を展開していたチェ・ゲバラに会見し、その後、ボリビア軍に逮捕され裁判にかけられた人物である。ボリビア行きに先立ち、キューバに長期間滞在して、フィデル・カストロやゲバラと対話し、キューバ革命方式の理論化を試みた著書『革命の中の革命』(1967年)をまとめた。これは、ベストセラーになった。
それから43年経つ2010年の3月、ドブレは(何度目かの来日で)東京に滞在した。在日フランス大使館と東京日仏学院(飯田橋付近)の招きによるもので、同学院や日仏会館(恵比寿近く)で講演した。フランス語の専門機関の招待企画であったことから、当然のことながら「ドブレ」は原音に近い「ドゥブレ」と発音され、紹介された。私もラ米学徒として長らく、「レジス・ドゥブレ」と表記するのをよしとしていた。世代交代で「ドブレ」と呼ぶ日本人が少なくなりつつある今、「ドゥブレ」という、より的確な呼び方を広めたらどうだろうか。
講演や発言は興味深いものだったが、この寄稿欄には到底書ききれない。私は、2度の講演の機会を取材に利用し、講演および、会場との質疑応答とインタビューの内容を、「初老のレジス・ドゥブレ、さり気ない来日」(4月20日発行『ラティーナ』誌)という長い記事にした。写真も4枚登場する。関心のある人には、ぜひ読んでいただきたい。
2010年4月1日 伊高浩昭