特別寄稿:伊高浩昭(ジャーナリスト)
【先月、本欄に「コルタサル没後25周年に寄せて」を寄稿しました。その続報をまとめました。】
アルヘンティーナの作家フリオ・コルタサル(1914―84)の没後25周年記念行事は、祥月命日の2月12日から続けられていたが、3月21日、この作家の代表作『石蹴り遊び(ラユエラ)』(1963年)に因んだ大がかりなパフォーマンス「ラユエラルテ」で終わった。
「ラユエラルテ」とは、ラユエラ(石蹴り遊び)とアルテ(芸術)を組み合わせた言葉。ブエノスアイレスの目抜き「7月9日」大通りの120カ所に貼り付けられた縦8メートル、幅2メートルの石蹴り遊び場と、これを描いた創作行為そのものを意味する。ポルテーニョ(港人=BsAs子)や旅行者は童心に返って1時間、石を蹴り飛び跳ねて遊んだ。
大通りのアスファルトに、原色を組み合わせたサイケデリックの美しい彩りで遊び場を出現させたのは、亜国の造形作家マルタ・ミヌヒーン。数十人の演奏家がサクソフォーンで、コルタサルが好んだチャーリー・パーカーのジャズを演奏するなか、人々はコルタサルの本などを提示して、石蹴りに参加した。
予定の1時間が過ぎると、遊び場ははがされ、車がひっきりなしに走る普段の大通りに戻った。この粋なハプニングないし「アルテ・エフィメロ(はかない芸術)」を企画したのは、首都市庁文化局。タンゴの本場でジャズというのが、セピア色っぽく床しい。
(了)