伊高先生からの最新のお便りです。
我がPB船は2月23日、パナマ運河を通過した。1972年に初めてこの運河を取材した際、パナマ船で通航してから7回は運河を通り抜けたと思う。いま、第3閘門水路を建設中で、大規模な土木工事の様子を太平洋側の運河出入り口付近で見ることができた。1914年にパナマ運河が開通したころ、ここを通れない大型船はなかった。だが20世紀後半、パナマックス(パナマ運河通航可能最大船舶)を超える旅客船、タンカー、軍艦などが増え、それらの船舶は南米南端のホーン岬回りを余儀なくされてきた。第3水路は、新しいパナマックスを設定することになる。
パナマ運河は、ほかにも挑戦を受けている。北極海の氷盤が解けつつあり、大型船の通航が可能になれば、北半球の欧米航路、亜欧米航路は大幅に短縮され、パナマ運河とスエズ運河の重要性は減ってしまう。また、パナマの近隣のニカラグアとコロンビアには道路、鉄道、港湾開発と絡めた運河建設構想があり、これらが実現する方向に動けば、パナマ運河には脅威となる。
第3水路は、現行運河開通100周年の2014年に開通する計画だが、それは、運河の命運をかけた至上命令なのだ。
船は、24日カリブ海側のコロン市サンクリストバル港を離れ、25日、コロンビアのカルタヘーナ港に入る。そして28日には、トゥリニダーダトバゴ(TT)のポートオブスペインに入港するが、現地の日本大使館には、昨秋までラ米研受講生だった安間美香さんが専門調査員として務めている。再会が楽しみだ。2011・02・25
カリブ海航行中の船上にて サルバドール