VIVA! SAURA 未来を生きるシネアスタ
撮った、愛した、生きた!
『壁は語る』『情熱の王国』2本一挙、怒涛のロードショー
スペインで50を超える作品を撮り続けたカルロス・サウラ監督が、91歳で亡くなったのは、2023年2月10日。ゴヤ賞栄誉賞を受賞する前日のことでした。日本では、『カルメン』『血の婚礼』『フラメンコ』などと共に『カラスの飼育』や『歌姫カルメーラ』『タンゴ』『サロメ』から、2016年のホタ(JOTA)のドキュメンタリー『J:ビヨンドフラメンコ』まで、数々の作品が公開されてきましたが、晩年は短篇やドキュメンタリー、そしてオペラや舞台の演出にも活動の場を広げ、メキシコで撮影された『情熱の王国』(2021)が最後の劇映画、そして、監督自らが出演するドキュメンタリー『壁は語る』(2022)が遺作となりました。この2本のことを知ったのは2023年の3月に行ったマラガ映画祭。きっと、日本で公開されるに違いない! という思惑は外れました。やはりフラメンコ映画ではないからか? と思いつつ、せめて追悼のためにこの2本を公開せねば、と思ったのが、この企画の発端です。監督は「過去を反芻するより、次のことを考えることに時間を使いたい」と言い続けていた監督の最後の2本を上映することで、今一度、カルロス・サウラ監督とその生き方を再発見したい! と思います。
――配給Action Inc.
壁は語る
洞窟の壁画からグラフィティをたどる、映画監督カルロス・サウラ最後の旅。
芸術の起源についてカルロス・サウラが、監督と主演を務めながら探求するドキュメンタリー映画。先史時代の洞窟における最初のグラフィック革命から、最も前衛的な都市表現まで、創造的なキャンバスとしての「壁」と芸術との関係を描く。人類進化の偉大な思想家フアン・ルイス・アルスアガや、現代アートを代表するアーティスト、ミケル・バルセロなど、個性的な人々が同行するパーソナルな旅。自らのことは多く語らないが、芸術に関しては饒舌で、まるで子供のようになるサウラ。アルタミラ洞窟の専門家と共にスペインの遺跡や洞窟をめぐり、人類の進化と共に、人はなぜ壁に描いたのか、を探っていく。そして、その視点は現代の若い世代、グラフィティ・アーティストのZeta、グラフィティ・ライターのMusa71、アーバン・クリエイターのSuso33、アーティストのCucoにも注がれる。サウラ監督自身が彼らに迫り、壁に描くようになった経緯を問いながら、現代と太古の壁画アーティストたちが時空を超えて、繋がっていく。
監督・出演:カルロス・サウラ/出演:ミケル・バルセロ、ペドロ・サウラ、ホセ・ルイス・アルスアガ、ロベルト・オンタニョン、Suso33、Zeta、Musa71、Cuco、アンナ・ディミトロヴァ
2022年/スペイン/DCP/75 分/カラー/英題:Walls Can Talk
配給:Action Inc. 配給協力:インターフィルム
情熱の王国
スペインの名匠カルロス・サウラと撮影監督ヴィットリオ・ストラーロ(『地獄の黙示録』)、最後のタッグ。
演出家のマヌエルが次に考えている舞台は、ミュージカルを作るためのミュージカル。構想からキャスティング、完成するまでを描くには、振付師が不可欠だった。彼は元妻であり著名な振付師、サラに助けを求める。ただ、サラも舞台を作る一員として舞台に出るのだが、交通事故で車椅子になった設定だ。キャスティングでは、何とかオーディションに受かろうとする若者たちの緊張感と競争心、そこから頭角を表す男女3人が生き生きと描かれる。その中の一人、イネスは父親と地元ギャングとの対立を心配しながら稽古に励む。メキシコの数々の力強い伝統音楽がアレンジされダンスとコラボレーションする中で、悲劇と虚構と現実が交錯する舞台が生まれる。撮影が始まった2019年で、カルロス・サウラは87歳、カメラマンのヴィットリオ・ストラーロは79歳。名匠の域に達した二人の作り手が、振付師と演出家を演じる円熟期にはいる40代のアナ・デ・ラ・レゲラ(Netflixドラマ「ビバ! メヒコ」)とマヌエル・ガルシア=ルルフォ(Netflixドラマ「リンカーン弁護士」)を主演に、20代の瑞々しいダンサーたちの熱い舞台を撮りきった。
監督・脚本:カルロス・サウラ/出演:アナ・デ・ラ・レゲラ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、グレタ・エリソンド、イサーク・アラトーレ、イサーク・エルナンデス、マノロ・カルドナ、ダミアン・アルカサル
2021/スペイン=メキシコ/カラー/2.00:1/ステレオ/95分/原題:El REY DE TODO EL MUNDO
配給:Action Inc. 配給協力:インターフィルム